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【歴史の担い手たち 後編】
後方からの圧力は既に無く、ファイナルラップの声を聞く頃、彼は前を走るあの人のマシンだけを見据えていた。

ようやく対等の立場で戦えるようになった途端に姿を消したあの人との戦いにケリをつけるためには、今をおいて他にない、そう彼には思われたのである。

しかし、チャンスがない。このコースで抜くためには、トサコーナーで抜くか、最後のシケインでブレーキ勝負を挑むしかなく、そう容易くあの人が抜かせてくれるとはどうしても思えなかった。

加えてタイヤの状態は悪く、次戦も同じエンジンを使わなければならないこの状況では、冷静にシーズンのことを考えれば彼には無理をする理由は一つもなかった。

迎えたトサコーナー。

抜けない。並びかける隙さえ与えてくれない。

(ここでは抜かせてくれませんか)

(フフッ、それはそうだろう、誰だってここでは後ろから来る奴の頭を押さえ付ける)

対話もそこそこに、淡々と二台のマシンは残るコーナーを消化していく。
(抜くことは出来ないのか)

焦燥。いや、それすらも通り越した諦観と言った方が彼の心理を表すには適切だろう。

この、コース幅が狭く、オーバーテイクポイントと言われている所でさえも、昨今作られたサーキットの中では通常のポイント変わらないイモラで、如何ともし難いという気分になるのも仕方がないことではあった。

彼が思考する間もレースは刻一刻と終末に向かっている。

時代を引き継ぐことを強制させたあの人。今回も自分の前を走らせたままで終わってしまえば、いつまで経っても彼は自分の力で時代を掴み取ったことにはならない。

(自分のためにも、F1のためにも、そして何よりあの人のためにも抜かなければならない!)

リヴァッツァを丁寧に抜けていくあの人のマシンに付かず離れず、彼は眼光鋭く前のマシンの動向を伺う。

この時にはもう諦める気持ちは微塵もない、最後の最後まで仕掛けようということで彼は腹を括っていた。

そしてその時は来た。最終シケイン、あの人のマシンが縁石にわずかに乗り上げすぎた。

「今だ!」

チェッカーフラッグまでのわずかな立ち上がりで、スピードに乗らないあの人のマシンを横目に内に切れ込んた。

「勝った」

恍惚の中で彼は最初にチェッカーフラッグを受けた。

彼は十二年の時を経て、ようやくあの人との決着を付けたのである。

誰よりも先にゴールに飛び込んだ後、いつものように、だが久しぶりに彼は歓喜に沸き立つピットに向けて手を振って答えた。

ここはフェラーリの聖地。マーシャルまでもが旗を振り、ある者は土下座までして勝利を祝福してくれる。それらにもねぎらうように答えていくうちに、いつしかタンブレロに差し掛かっていた。

(これで、後ろの若者と心おきなく戦えるだろう。おめでとう、マイケル)

慌てて彼が左側を見た時、あの人の姿形はすっかり消え失せ、チェッカーフラッグを受けて減速した若者の駆る青いマシンが目に映った。

「ありがとう、ありがとう」

耳に入り続けていたチームからの無線。それに答える形となった感謝の言葉だが、相手があの人であったことは、彼以外に知る者はいなかった。
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